私にとっての人形 加藤礼子

投稿日時 2017-06-24 20:48:27 | カテゴリ: news

私にとっての人形 加藤礼子

 それは遠い昔のまだ私が幼く、母や父の愛に無防備に全てを委ねていた頃への郷愁に原点があるのかもしれない。
 おとぎ話が好き。ちょっぴり怖いくらいきれいで不思議なものが好き。どんな世界にも存在させられる自由さが好き。おそらくは無理をして買ってもらって本当に嬉しくて、母に習って幼い手で一生懸命衣装を縫った。
ミルクを飲ませ抱っこしお母さんごっこから学校ごっこまでなんでも場面を作ってお話を作った。
 人形たちはおしゃべりし笑い泣いた。家族の前で次々浮かぶ私の幼いストーリーを彼らは素晴らしく演じてくれた。雨が降る日は哀しいお話を晴れた日は明るいお茶目なストーリーを。家族はおそらくは苦笑しながら人形劇場の1人公演を繰り返し見なければならなかったはずだ。あゝありがとう 父 母。幸せだった時間をありがとう。
 人形たちはずっと私を見守りこの世で一番好きだった母が召されていった後も私の心に灯をともしていたのだろう。こうしてなんと何十年の歳月を経て今あの頃の母よりずっと年を取ってしまった私の元から、再び幸せな物語を演じようとしている。

 私は命の物語を作らせていただこう。




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